ビジネスパートナーとしての人事(HRBP)
勉強会参加者の問い
前回に引き続き、『人材マネジメントの壺 勉強会』の中で出た参加者の「問い」をご紹介します。テーマは1.HRMです。
アカツキで労務を担当している安部さんは、こんな問いを持ちました。
「マネジャーの仕事は、メンバーが最高に貢献できる「環境の創造」である」において、人事部門の役割は「人事労務管理の主体者」から「ビジネスパートナーとしてライン部門と協働する」ことに移行したとありますが、ここでいう協働とは具体的にどういうことを指しているのでしょうか。
また、アカツキで採用を担当している秋山さんもHRBPに目をつけました。
一般的にHRBPを置いていても機能せず、お飾りで終わってしまうケースも多いようです。HRBPが機能するにはどうすれば良いでしょうか。また機能するHRBPの増やし方(採用、アサイン、育成の仕方)を知りたいです。
さて、彼らが議論の末に辿り着い答えは以下のとおりです。
HRBPの役割
まずは安部さんの問いから入りましょう。ビジネスパートナー(BP)とは具体的にどんな役割なのでしょうか?
ディビッド・ウルリッチが『Human resource champions(1997年 邦訳MBAの人材戦略)』にて、人事の提供価値を以下の4つと置いたところから、人事のビジネスパートナーとしての側面が着目されました。
- 戦略を達成する
- 生産性の高い組織の仕組みを築く
- 従業員のコミットメントとコンピテンシーを向上させる
- 組織の変革を実現する
リクルートWorks133では「人事部の、今、あるべき形」という特集の中で、下図のようにグローバル人事が持つべき標準的な4機能を提示しています。

ビジネスリーダーや従業員を支援するBPを人事部の中核に置き、それをOD&TD、CoE、OPsの3つの機能が支える形です。
ここでのBPとは、いわゆる日本の事業部人事とは異なり「事業のリクエストに応えるだけでなく、 彼らがまだ言語化していないニーズを引き出してその課題を解決しようとする」役割とのことです。
BPはニーズに応える人である。 要員計画の場合、 うちの課は何人必要、 というリクエストを聞き、 それに応えるわけではない。 ビジネスの成長戦略を実行しようとするとき、 同じ営業でもセールスの手法を変える必要がある。 その場合、 採用をどのようにして、 既存の人材はどう育成するかを提案。 事業に対して人の側面から戦略の立案や変更の要請を行うこともある。(Works133 p9)
なぜHRBPは機能しないのか
では次に、秋山さんの問いに移りましょう。
なぜHRBPは機能しないことが多いのでしょうか?
SAPジャパンのコンサルタント藪本レオさんは、「守りの人事から攻めの人事へ」 – 攻めのHRビジネスパートナーモデル 第1回の中で、日本企業の多くはこの5つのパターンに陥ってしまうと指摘しています。
- 既存の組織名、職務名を”HRBP”に名称変更しただけ
- ビジネス側の立場が強く、本部人事との単なる仲介役または定型業務の依頼先となる
- HRBPが自身の役割を理解していない
- HRBPが担当ビジネスを理解していない
- HRBPの戦略タスク実行スキルが不足している
どうすればHRBPは機能するのか
さて、ではどうすればHRBPは機能するのでしょうか?役割と人材の2つの側面があります。
【役割面】事業側と役割認識を揃える
前出の藪本さんは同記事でこう言っています。
HRビジネスパートナーモデルがうまく機能していないと感じられている企業においては、「HRBPへの期待(設置の目的)」、「HRBP自身によるHRBPの役割認識」、「ビジネス側によるHRBPの役割認識」、及び「実際のHRBPの動き方」の4つのすべてもしくは一部が異なっています。裏を返せば、この4つを合わせることでHRビジネスパートナーモデルを機能させることができます。

特に、ビジネス側は人事に戦略的アドバイザーであることを期待していません(期待できることを知りません)。そこを担うことができる人材が実際に動き、信頼を得るところからHRBPはスタートします。
【人材面1】必要な知識とスキル
どんな人材がHRBPを担うことができるのでしょうか?
HRBPには人事の専門知識があるのは前提として、事業の深い理解が求められます。
ビジネスを支援し、高いパフォーマンスをあげることに寄与するために、 事業と商流 (その事業の儲けの構造) に対する深い知識を持っていることが求められる。(Works133 p9)
そして社内コンサルタントとしての問題解決スキル、事業部メンバーの話を傾聴し質問をし行動を促すコーチングスキルが必要となります。
【人材面2】採用と育成
どうやってHRBPを採用、アサイン、育成すれば良いでしょうか。

内部の育成・アサインとしては人事部からのスタート、事業部からのスタートの2つの道がありそうです。
外部から採用するときは、人事系コンサルタントと事業人事プロフェッショナルが考えられます。この場合は社内人事部からのスタートと同じ形になるでしょう。
事業の管理職クラスと対等にコミュニケーションを取る必要があるため、マネジメント経験も役に立つはずです。
【人材面3】スタンスが最も重要
この勉強会ではHRBPには、スタンスが最も重要なのではないか、という議論が交わされました。事業を、現場を、なんとか良くしたいというスタンスです。
現場知によって人と事をつなぐ役割であるHRBPは本来の意味での「人事」かも知れません。
「現場を支えたい。現場に寄り添って課題を解決したい」という志向を持った人でなければHRBPは務まらないでしょう。
社内アサインや外部採用する場合には、この志向の有無を見極めることが、知識やスキルを見る前に必要だと考えました。
最後に、アカツキの人事企画室WIZでは「GUNSHI」として現場リーダーの直接支援をおこなっています。その活動をアカツキテラスで紹介していきますので、ビジネスパートナーとしての一事例としてご覧ください。

次回はテーマ2.等級への問い、Q3.登りたくなる理想の等級はどんな形?です。
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「Q2.ビジネスパートナーとしての人事(HRBP)は、どうすれば機能するのか?」に2件のコメントがあります
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