リーダー人材の育成
今回から、リーダーシップ開発について考えていこう。「Works 人材マネジメント調査 2015」によれば、94.3%の企業が「次世代リーダーの育成」を人事課題だと認識している。どうすればリーダー人材を育てることができるのだろうか。
経験からの学習
国際的なリーダー育成機関であるセンター・フォー・クリエイティブ・リーダーシップ(以下CCL)は、リーダーを育てる「経験」を明らかにした。その結果、「経験からの学習」を最大化するためには、アセスメント、チャレンジ、サポートの3つの要素が含まれている必要があると言う。
1.アセスメント
自分がいまどういう状況にあるのか、何はうまくやれていて、何はうまくやれていないのかを知らせてくれるデータ(人事評価、360°アセスメント、顧客の反応、同僚からの指摘、上司からの注意など)があること。
経験の中にアセスメントの要素があることで、自分に変化が必要であることを知り、現在の自分と望ましい自分とのギャップを埋めたいという気持ちになる。
2.チャレンジ
慣れ親しんだやり方や居心地のよい場所から一歩踏み出さざるを得ないような課題への取り組み。
未経験の課題や強いプレッシャーを伴うような課題に直面したとき人は不安定な状態となり、それまでのやり方や考え方の見直しを迫られ、新しい能力を身につける必要性に駆られる。
3.サポート
学習や成長のための努力が「価値あることだ」とメッセージを送ること。経験が困難を伴うものであるほど、心の支えとなる励ましや承認が必要となる。
自分にはチャレンジを乗り切る力があり、成長できる価値ある人間だというポジティブな姿勢を維持することができる。
※CCLの研究に関する内容はリクルートマネジメントソリューションズ「効果的な次世代リーダーの育成法~国際的リーダー育成機関の研究から~」を参考にした。
日本企業のリーダー育成
底上げ式で一律の管理職研修や、突出した選抜・抜擢を避けるローテーションを行なってきた日本企業にとって、リーダー育成は元来苦手分野である。それを打破する方法として、守島基博『人材マネジメント入門 』では以下3つの方法をあげている。
1.早期選抜
ポストではなくリーダー育成のための早期選抜。選抜されなかった人が、デモチベートする恐れがあるため適宜選抜グループを見直していくことが必要となる。
2.キャリア連動
研修だけで終わらず、それぞれにあった仕事(配属)、メンター、修羅場経験を用意する。
3.個別デザイン
個々人のポテンシャル、強み・持ち味を踏まえ、個人と企業が協力してデザインする。
一人ひとりと向き合い、オートクチュールの一点物のようにリーダーとなる経験をデザインしていくことが必要なのだ。
次回はリーダーの資質と行動を考える。

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「リーダーの学びを最大化するのは、アセスメント、チャレンジ、サポートを含んだ「経験」」に4件のコメントがあります
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