評価は何のために行うのか?
評価に不満はつきものだ
毎年、数多くの評価面談に同席するが、涙を見なかった年はない。感動や喜びの涙もあるが、悔しさや悲しみの涙もある。
先日も、ある優秀な若手社員が「僕は、評価されるために仕事をしているわけではありません!」と強い口調で言い切ったシーンがあった。さあ困ったな、と思いながらも彼の気持ちもわかる気がした。私の心の中に住んでいる『尾崎豊』も他者から評価されることに葛藤しているのだ。
リクルートマネジメントソリューションズが行なった一般調査の結果からも、世の半数くらいの社会人は評価に不満を持っていることがわかる(下図参照)。

なぜ企業は評価するのか?
では、なぜそんな不満を与えながらも企業は評価を行うのだろうか?
答えは「格差」をつけるためだ。
根本孝・金雅美「人事管理(ヒューマンリソース)―人事制度とキャリア・デザイン (マネジメント基本全集)」によれば、評価制度の原点は「やってもやらなくても同じ」という悪平等による頑張った人の意欲低下の回避と、頑張りの程度に応じて報いることである。
評価が嫌だ。その気持ちはわかるが、ではどうなれば嬉しいだろうか?評価が表立って行なわれず、人事や経営層が直観で給与や処遇を決めていた方が良いのだろうか(その直観も厳密にいえば評価だ)。
それとも全社員が同じ給与であれば良いだろうか?仮にそうしたとしても、仕事のアサインや勤務地などの処遇では必ずどこかで差がつく。それを評価なしに何の根拠で行えば良いだろうか。
以前「等級とは、社員の序列・ランキングの基準であり、処遇の根拠となるもの」で書いたとおり、給与や処遇には必ず格差がある。その基準となるのが等級で、それを決める根拠が評価情報である。ごまかさず、何によって差をつけるか明確にしている企業こそ誠実である。
下図は評価が他のサブシステムとどう繋がっているか示している。評価の情報が人材マネジメントの中心にあることがわかるだろう。
テーマ3.評価でお伝えしたいこと
テーマ3.評価。この先の予告として2つのことをお伝えしておきたい。
それは「評価の不満としてあがる声は、実は評価への不満ではない」こと、そして「評価とは主観であり、完璧はありえない前提で磨くもの」ということだ。
次回は、評価の目的について考えたい。

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「人事評価は「やってもやらなくても同じ」という悪平等をなくすもの」に10件のコメントがあります
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